2019年統計検定1級応用(理工学)問4答案
小問[1]-1
- 以上のモデルにおけるの自己共分散行列の各成分は
で与えられることを示す。
のとき、
である。今モデルは定常なので、自己共分散は時点差のみに依存する。すなわち、
より、
である。よって
である。分散共分散は対称行列なのでのときは、
である。以上より
自己共分散行列の各成分は
で与えられる。
小問[2]-1
- 次対称行列 を
とする。
一般のおよび小問[1]の行列に対し、の逆行列はで与えられることを示す。
の各成分を以下の5通りに分けて計算する。
①のとき
である。
②のとき
である。
③のとき
である。
④のとき
である。
⑤のとき
小問[2]-2
行列のある行にある値を掛けて他の行に足した行列の行列式は
もとの行列の行列式と等しく、上三角行列の行列式は対角成分の積に等しい。
の行目にを掛けて行目に足す。
そのようにしてできた行列の行目にを掛けて行目に足す。
これを行目まで繰り返すと、
と求まる。
をの単位行列とする。
より、
と求まる。
小問[3]
- 小問[2]の行列が正定値行列であることを示す。
を次元縦ベクトルとする。
ここで()は転置を意味し、とする。
に注意するとのに関する2次形式は
と常により大きい。
従っては正定値行列である。
小問[4]-1
- の行列の要素の値のみをに変えた行列をとする。行列が非負定値行列であることを示す。
を次元縦ベクトルとする。
ここで()は転置を意味し、とする。
のに関する2次形式は
と常に以上である。
従っては非負定値行列である。
小問[4]-2
- となる(ただし)はどのようなベクトルであるか?
となる(ただし)は
を満たすベクトルである。
小問[5]
- この問のモデルにおける自己回帰係数が既知もしくはきわめて精度よく推定されているが誤差分散は未知であるとき、の信頼区間の構成方法を示す。
よりは
と互いに独立に正規分布に従う確率変数の線形和で表せるので、
である。ここで、
とした。
小問[3]の結果より次対称行列は正定値なので、その逆行列も正定値である。*1
よって、
を満たす非特異行列が存在する。*2
ここで
と変換されるの確率ベクトルが従う分布を示す。
ここで
である。
は多変量正規分布に従うの線形変換なのでも多変量正規分布に従う。
また、
より
であり、
である。よって
である。よって、は互いに独立にに従うのでは自由度のカイ二乗分布に従う。
即ち、
である。さらに
なので、
である。
以上の議論より、
この問のモデルの実現値が得られたとき、
は自由度のカイ二乗分布の実現値である。
ここで、
である。
この事実を用いて以下のようにの信頼区間を構成できる。
ここで、は自由度のカイ二乗分布の下側点である。
誤りなどありましたら、ご指摘いただけるとありがたいです。