割った余り

主に統計学の勉強メモ

現代数理統計学(竹村彰通 創文社 p34 問3 解答)

問)
k(>0)次のモーメントが存在すれば 0 < h < k となるhについて
h次のモーメントは存在することを示せ。

解答)
下記の不等式

    \begin{eqnarray}
        |X|^{h} \leq 1 + |X|^{k}
    \end{eqnarray}
...(0)
が任意のX=xに対して成り立つと仮定する。
Xが離散確率変数の場合、Xの確率関数P(X)を(0)式の両辺に掛けた場合、
常にP(X)\geq0が成り立つので

    \begin{eqnarray}
        |X|^{h}P(X) \leq P(X) + |X|^{k}P(X)
    \end{eqnarray}
...(1)
が成り立つ。同様に

    \begin{eqnarray}
        \sum_{x}|x|^{h}P(x) \leq \sum_{x}P(x) + \sum_{x}|x|^{k}P(x)
    \end{eqnarray}
...(2)
も成り立つ。
Xが連続確率変数の場合、X確率密度関数f(X)を(0)式の両辺に掛けた場合、
常にf(X)\geq0が成り立つので

    \begin{eqnarray}
        |X|^{h}f(X) \leq f(X) + |X|^{k}f(X)
    \end{eqnarray}
...(3)
が成り立つ。同様に

    \begin{eqnarray}
        \int|x|^{h}f(x)dx \leq \int{f(x)}dx + \int|x|^{k}f(x)dx
    \end{eqnarray}
...(4)
も成り立つ。
以上から(0)式が任意のX=xに対して成り立てば、

    \begin{eqnarray}
        E[|X|^{h}] \leq 1 + E[|X|^{k}]
    \end{eqnarray}
...(5)
が成り立つ。
また、この問の仮定よりk次モーメントが存在するので

    \begin{eqnarray}
        E[|X|^{k}] < \infty
    \end{eqnarray}
...(6)
が成り立つ。したがって、(5)式と(6)式により

    \begin{eqnarray}
        E[|X|^{h}] < \infty
    \end{eqnarray}
...(7)
が成り立つ。(7)式はh次の絶対モーメントが存在することと同値である。
h次の絶対モーメントが存在するとき、
E[|X|^{h}]についてX<0積分(和)区間X{\geq}0積分(和)区間に分けてそれぞれ
E_{X<0}[|X|^{h}]E_{X{\geq}0}[|X|^{h}]、と表すと
0{\leq}E_{X<0}[|X|^{h}]<{\infty}0{\leq}E_{X{\geq}0}[|X|^{h}]<{\infty}
であるので、-{\infty} < E_{X<0}[X^{h}]{\leq}0である。
よって、k次絶対モーメントが存在すればk次モーメントが存在する。
以上より、(0)式が任意のX=xに対して成り立つことを示せば、h次のモーメントが存在すること
を示したことになる。
以下、(0)式が成り立つことを示す。
hkはモーメントのべき指数であるので自然数であることに注意して、次の3通りの場合を確認する。

  • (ⅰ) |X|=0のとき
  • (ⅱ)  0<|X|<1のとき
  • (ⅲ) |X|\geq{1}のとき

(ⅰ) |X|=0のとき

    \begin{eqnarray}
        0 \leq 1 + 0
    \end{eqnarray}
より(0)式が成り立つ。

(ⅱ)  0<|X|<1のとき
 0<|X|^{h}<1, 0<|X|^{k}<1であるので、

    \begin{eqnarray}
        |X|^{h} \leq 1 + |X|^{k}
    \end{eqnarray}
...(0)
が成り立つ。

(ⅲ) |X|\geq{1}のとき
 |X|^{h}<|X|^{k}であるので、

    \begin{eqnarray}
        |X|^{h} \leq 1 + |X|^{k}
    \end{eqnarray}
...(0)
が成り立つ。
以上より(0)式は常に成り立つので、h次のモーメントは存在する。

以上